有機化合物
近代科学の黎明期から有機化合物と生物とは密接な関係にあった。それらに関する歴史的な経緯は生物学と有機化学の年表にも詳しいが、18世紀までは今日で言う有機物は、ある意味で生物の付属物としてみなされていた。それ故、19世紀はじめの生物学者イェンス・ベルセリウスは、17世紀 - 18世紀の化学者ゲオルグ・エルンスト・シュタールの生気論の主張である有機体(生物)の体内でしか製造できない化合物という概念を言語化し「有機物」という名称を提唱した。
有機化合物が生物から独立した化学の研究対象と考えられるようになったのは、1828年にフリードリヒ・ヴェーラーの尿素の合成に端を発する。ベルセリウスの弟子であったヴェーラーは、シアン酸アンモニウムを加熱中に尿素が結晶しているのを発見し、無機物から初めて有機物の尿素を合成していたことを師のベルセリウスにも知らしめた。
この発見以降、生物の関与なしに、複数種類の有機物が化学的に合成され、生気論に打撃をあたえた。有機物という語は「生物由来」という概念を内包しており、厳密にいうならば有機化合物の区分と有機物の区分は完全には一致しない。そして有機物という語はベルセリウスのものに比べ若干変わったのを除けば殆ど変わらず現在でも言い表されているが、実際には生物を介さず化学的に合成された有機物が殆どを占めている。あるいは「生物由来の有機化合物」という意味で、「天然物」あるいは「天然化合物」という語も使用される。

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